小動物やキャラクター、雑貨や洋服などカワイイものに囲まれて暮らしたい!そう思うのは、日本ではごく自然なことですよね。男性でも女性でも、誉め言葉として「可愛い」と言うのは不思議と気軽に言えます。
そんな日本発祥のカワイイ文化、海外では「kawaii」と表記され、インスタグラムのハッシュタグ(#)に使われたりと世界で一般的に使われています。
しかし、海外で「kawaii」というのは子供っぽいと思われることも。
今回は、日本発の「カワイイ」文化を日本と海外の2つの視点から分析したいと思います。
そもそも「カワイイ」とは?

そもそも「カワイイ」というのは一体どういうものを指すのでしょうか。人物や動物に対してだけでなく、お菓子や家電(?)、あるいは恐怖対象のモンスターまでカワイイと言う日本人。
その共通点は一体何なのでしょう?
コトバンクによると次のように定義されています。
《「かわゆい」の音変化。「可愛い」は当て字》
1 小さいもの、弱いものなどに心引かれる気持ちをいだくさま。
コトバンク
2 ほかと比べて小さいさま。
3 無邪気で、憎めない。すれてなく、子供っぽい。「生意気だが―・いところがある」
4 かわいそうだ。ふびんである。
一般的にカワイイと言った際、1番と2番の「小さいもの、弱いものに心引かれる」という意味で使用されます。「弱さ」に関連して4番目の「かわいそう、不憫(ふびん)」という意味になります。
3番の「無邪気さや子供っぽさ」は海外の方が抱く印象と同じです。カワイイ=子供っぽいという印象については後ほど詳しく見ていきます。
まとめると、小ささや弱さ、かわいそうで不憫な要素を含んだものが「カワイイ」という言葉の対象になります。「カワイイ」電子レンジなら小さいもの、「カワイイ」モンスターなら不憫なキャラクターというように自然と使い分けられています。
海外で「カワイイ」というと?

日本発祥の「kawaii」文化は海外にも伝わっています。
しかし、西欧では「カワイイ」という言葉は子供っぽいという印象があり、少しネガティブな印象を受けることもあります。それは、物に対してだけでなく、カワイイ物好きな人に対してもです。
その理由は、日本と西欧の好みや美的感覚の違いです。
西欧では、自立した女性が好まれることが多く、実際に欧米の中高生は、大学生や社会人と見間違えるほど大人っぽいです。一方で、日本で「守ってあげなきゃ!」と思われるような可愛らしい人は、幼くて自立していないと見られることがあります。
しかし、すべての人がカワイイ=幼いというイメージを持っているわけではありません。
海外には、日本のアニメに詳しい人やカワイイものを好む人もいます。そのため、日本人の感覚を理解している人や同じような感性を持っている人もいます。
アジア諸国では、日本人と近い感性を持っている人が多く、可愛らしいものが好まれることもあります。同時に、大人っぽい美しさを好まれることもあり、個人の好みによります。
日本人が
「カワイイ」に逃避する理由

カワイイものは、年齢や性別に関わらず好きな人が多いですよね。しかし、なぜ子供だけでなく大人でもカワイイものが好きなのでしょうか?
「そんなの個人の趣味や好み」と思われるかもしれません。確かに一理あります。
しかし、個人の趣味ならなぜこれほど多くの大人がカワイイ物を求め、市場ではカワイイ物が売られているのでしょうか?そして、流行にとどまらず世界に知られるポップカルチャーと化しました。
『神秘のユニコーン事典』という本によると、日本のカワイイ文化は「成年層にもおよび、女性の極度に幼稚なふるまいやものの扱いに影響」を与えていると述べられています。
それでは、日本でカワイイものが好まれる理由とその社会背景を見てみましょう。
1.
社会的プレッシャー

日本の文化的・社会的プレッシャーに対する抵抗運動と解釈できる。大人の入り口に立つ若者にとって、こうしたプレッシャーはあまりに重く、規範や仕事や孤独が息苦しく感じられるかもしれない。
『神秘のユニコーン事典』
受験や就活、比較され社会に揉まれながら生きていかなくてはならない現代。誰しも競争が得意とは限らず、周囲からのプレッシャーや自ら崖っぷちに追い込んで精神的に疲労してしまうこともあります。
そのような苦痛から逃れるための一手段として、小さくて自分を傷つけないカワイイものが好まれると考えられます。
2.
自分の弱さを表現する手段

自分の弱さやありのままの自分を表現する一手段
『神秘のユニコーン事典』
カワイイというのは、最初の定義でご紹介した通り「小さくて弱い」という意味が含まれています。本来、弱さとは隠したくなるものです。(動物の世界で例えるなら、弱点は敵から隠さないと生き残れません)
しかし、カワイイ物好き、カワイイ人として表現することで自分の弱さを隠さず、ありのままの姿でいられます。そして「カワイイ」という言葉が、誉め言葉として使われているように、可愛らしさは社会でネガティブに見られません。
むしろ、可愛らしさはポジティブに見られることがあります。
人によっては、弱さや不憫な姿が好印象な場合もあり、そのような可愛らしさは悪い印象よりも、ありのままの姿という意味で好印象です。力のある大人の姿だけではなく、素直さやありのままの姿として、可愛さが好まれているのかもしれません。
そして、社会がそのような価値観を受け入れているので、何歳になっても安心してカワイイものが好きと言えるのではないでしょうか。
まとめ
カワイイ文化を持つ日本。カワイイ物は悪いわけではなく、そして、それを好むことも悪い事ではありません。
しかし、社会的プレッシャーからの逃避として、カワイイものを好み、その姿が受け入れられる社会だとしたらどうでしょうか?
参考
『神秘のユニコーン事典 幻獣の伝説と物語』 Rustica Éditions