「どうして学校で3年間あるいは6年間、英語の勉強をしたのに英語が話せないのか」と考えたことはありませんか?
日本の英語教育は、問題点が指摘されつつも、小学校から英語を授業に取り入れたり、積極的に外国人講師を採用するなど前向きな姿勢です。

しかし、英語を話すことが苦手な日本人が多いのも事実です。それは、ぱっと見だけの感覚だけでなく、統計にも表れています。

TOEICを実施している国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が実施したアンケート調査では、英語で話すことが「得意」と回答した人は47.8%「苦手」と回答した人は52.2%という結果で、英語に対して苦手意識を持っている人の方が多いことが明らかになりました*。

一方で、「ネイティブのような発音で話すことができるようになったら、積極的に英語で外国人に話しかけたい」と思っている人は89.2%と、英語が話せるようになりたい人は多いことも明らかになっています。

英語が話したいけど、勉強しても話せない。
そんなお悩みをお持ちの方にオススメしたいのが「英語脳」をつくることです!

*国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が、2020年に20~50代のビジネスパーソンに対して行った「英語に関するアンケート調査」

英語脳とは

「英語脳」とは、英語を英語のまま理解する、ネイティブに近い思考です。

通常、英文をつくる時や聞いた時、一度日本語に訳してから理解するかと思います。しかし、dogやcatといった簡単な英単語、”Good morning!”といった短文は、日本語に訳さずとも英語のまま理解することができます。

もし短文だけでなく、長文もそのまま理解し、自由自在に英語が使えたらどうでしょう?それは英語が「できる」と自信を持って言えると思います。
英語脳は、そんなネイティブに近い思考を目指し、自分の思考を英語と直結させることです。

-条件-
中学レベルの英語知識

早速、英語脳づくりを始めたいところですが、1点だけ条件があります。

それは、中学レベルの英語知識を持っているということです。逆に言えば、中学レベルの英文法や単語があれば、英語脳をつくることができるのです。

英語脳は、自分が持っている知識と語彙力で英文をつくります。そのため、基礎的な中学レベルの英語知識が必要となります。

「学生時代以来、英語の勉強をしてない」「英文法は習ったけど忘れちゃったかも」という方もいらっしゃるかと思いますが、ご安心ください。後ほど詳しく取り上げますが、もし勉強を進めている途中で、文法が分からなくなったら、辞書のように文法書を開いてください。

文法の勉強がメインではなく、使える英語を身につける英語脳をつくることが目的です。そのため、文法の復習は短時間で行いましょう。

こんな方にオススメ

英語脳づくりは、次のような方におすすめです。

  • 何度もチャレンジしたけど英語ができない
  • 英検やTOEICの点数はとれるけど、英語が話せない
  • 大人になって改めて英語が話せるようになりたい
  • 留学を前に英語が話せるか不安
  • 日常会話レベルの英語が瞬時に話せるようになりたい 等

もちろん、上記に当てはまらなくとも、英語脳は多くの人にとって役立ちます。今までの勉強法に疑問を抱いている方や趣味として英語に興味がある方など、是非チャレンジしてみてください。

瞬間英作文トレーニング

英語脳をつくるためのメインの方法は、瞬間英作文トレーニングです。
教科書と問題集を行き来する必要はありません。

瞬間英作文トレーニングとは、日本語の文章を瞬時に英文にするというトレーニングです。いたってシンプルなトレーニングですが、スピーキングの練習にとても効果的です。

具体的には、日本語の文章を見て(あるいは聞いて)英語で言い換えます。
例えば、

アンナはどこの出身ですか? – カナダです。
(数秒置いて)
Where is Anna from? – She is from Canada.

文法は中学生レベルで単語も難しくありません。
しかし、簡単な文章でも、やってみると想像と違い、つまづくこともあります。時には「なんでこんな簡単な文章もつくれないんだ!」と落ち込むかもしれません。

日本の英語教育は、文法や単語を重点的に学びます。しかし、英語の知識を蓄えたものの、英語が話せないという状況は珍しくありません。

HBの鉛筆、2B、3B、2Hと、あれやこれやと多種多様な鉛筆を購入したものの、紙の上で使わないと何の意味がないのと同じです。英語の知識はコレクションではありません。様々な文法知識を活かし、自分の言葉で伝えることで、初めて英語が話せると言えます。

しかし、学校では「活かす」ための英語を教えることはあまり重視されていません。国語、算数、理科、社会と同じように、英語は一科目として扱われ、筆記や暗記テストが行われています。
もちろん、それらは授業の内容としては大事ですが、自分の言葉で英語が話せるようになるには、遠回りかもしれません。

知識と実践力をひもづける方法として、瞬間英作文は非常に役立ちます。そして、もう1つ大切なことは、ミスをして悔しくても、プライドが傷ついても、諦めずに何度も繰り返し、勉強を継続する意志の強さです。

オススメの2冊

瞬間英作文のトレーニングをはじめてする方にオススメなのは『英語のスピーキングが驚くほど上達する NOBU式トレーニング』(IBCパブリッシング)と『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(ベレ出版)の2冊です。(以降、『NOBU式』と『瞬間英作文』)

どちらも左ページに日本語、右ページに英語と、シンプルで見やすい構図です。余分な情報がないため混乱したり寄り道をしないため、三日坊主になりがちな方でも継続できます。

『NOBU式トレーニング』は、簡潔で分かりやすい説明や英語の語順で並べられた日本語訳、意識したいポイントが赤字で表記されているなど、すっきりと見やすく毎日取り組みやすい内容です。
瞬間英作文トレーニングを行う方に、始めの1冊として是非オススメしたいです。もしトレーニングに慣れてきたら、1.5倍速で流し、瞬時に答える練習をしてみましょう。

『瞬間英作文トレーニング』は、名前の通り『瞬間英作文』に着目した書籍であり、トレーニング方法を広めた1冊でもあります。青い表紙が特徴的のこちらは中学レベルで、基礎トレーニングとして最適です。

他にも、実際の会話を意識してつくられた『スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング』、さらにトレーニングしたい人にオススメな『おかわり!どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』など、自分にあった1冊を探せるのが魅力的です。

次に、瞬間英作文の勉強を行う上で、気をつけたいポイントについて見ていきたいと思います。

1.
声に出す

瞬間英作文のトレーニングでは、英文を声に出すことが大切です。
心の中で答えるのではなく、口にすることで、日本語とは異なる英語の発音やイントネーションを覚えることができます。

もし、家の事情で発声するのは難しい場合や誰かに聞かれるのは恥ずかしいという方は、こんなアイディアグッズを活用してみてください。

一言で説明すると、メガホンの逆機能の商品です。

声のボリュームを下げてくれるため、壁が薄い部屋や近隣への迷惑を気にせず、思い切り声を出すことができます。
通常は、カラオケの練習やボイストレーニングに用いられるアイディア商品ですが、英語のトレーニングにも役立ちます。

2.
文法はつまづいた時に調べる

トレーニング中に文法が分からなくなった場合、辞書のように調べましょう。文法を始めから勉強するのではなく、困った時に該当の箇所だけ読んでください。

なぜ文法の勉強をする時間をあえてとらないかと言うと、1つに瞬間英作文トレーニングに集中するため、2つにあれもこれもと文法の勉強を始めてしまうからという理由です。

あくまで、瞬間英作文のために文法を確認します。そのため、必要以上に英文法の知識人にならなくてよいのです。英文法のためのノートづくりや参考書の熟読は必要ありません。
文法に割く時間は短時間に心掛け、英語を話すためのトレーニングである瞬間英作文に集中しましょう。

また、世の中には、見ているだけでモチベーションが上がるような綺麗な勉強ノートがありますが、あれは一種の芸術です。語学や知識が書いてある作品です。
常人にとっては、語学を習得するための時間と作品をつくる時間は、全くもって別ものだと考えた方がいいでしょう。

3.
自分の言葉で話す

書籍を使った瞬間英作文のトレーニングに慣れたら、今度は自分の考えや身近な出来事を英語で伝えるトレーニングをしてみましょう。与えられた例文ではなく、自分の考えを英語で瞬時に伝えることに慣れるためのトレーニングです。

いざ、自分の言葉で伝えようとすると、簡単な単語を並べた短文になるかもしれません。思い通りに言葉が出なくて、もどかしく感じるかもしれません。

しかし、短文でもつたなくても良いのです。定型文ではない、自分の考えを伝えた文章であることが大切なのです。

具体的な方法は次のようなものがあります。

  1. スカイプを使った英会話
  2. 独り言のように話す
  3. 日記やエッセイを英語で書く
  4. ブログを英語で書く
  5. 読書感想文を英語で書く
  6. 英語で小説を書いてみる
  7. SNSで外国人とチャットする
  8. 語学交換パートナーを探して会話をする
  9. ディベートに参加する 等

アイディアに限りはありません。英語を使う機会を積極的に見つけ増やすことが大切です。

瞬間英作文は、即戦力にならない?

瞬間英作文の基礎トレーニングは、言ってみれば、マニュアルに近い文章です。
例文は会話文ですが、練習用の文章がそのまま実践で使えるとは限りません。そのため「即戦力にならないなら無駄じゃないの?」と思われるかもしれません。

しかし、瞬間英作文トレーニングは、長年日本人の「英語を話すことが苦手」ということの突破口であることは間違いありません。即戦力のトレーニングではなく、知識だけが詰まった頭を自分の言葉で文をつくる頭に切り替える練習です。

SIMカードを差し込み海外用のスマホに切り替えるように、手軽に英語脳に切り替えたいところですが、残念ながら英語脳のSIMカードは売っていません。なので、コツコツと自分の頭を英語脳に適応させるのです。

また「なぜ日本語を英語に訳すのか」「英語を英語のまま理解するのではないの?」「日本語を訳したら英語脳とは言わないのではないか」という意見もあるでしょう。
確かに、一理あると思います。

しかし、瞬間英作文トレーニングは、英語を英語のまま理解する英語脳をつくるための第一歩です。瞬時に日本語から英文をつくれるようになることは、英語を英語のまま理解するための前段階です。

基礎トレーニングは、知識と実践力を連結させるための練習であり、そのための例文です。基礎が身に付いた次の段階で、自分が話したいことを持ち前の語彙力と知識で英文にします。そして、日本語を介さず英語のまま思考する英語脳に切り替わる段階になります。

ここまで辿り着くには時間がかかります。
「即戦力」という意味が、すぐ使えるということならば瞬間英作文トレーニングは当てはまらないかもしれません。しかし、それは英語脳づくり、ひいては語学を習得することにおいても同じです。

一朝一夕で語学は身に付きません。
特にアルファベット、文法、発音と多くの点で日本語と異なる英語はなおさらです。それでも、英語を自分の言葉で話す最短の勉強方法として、瞬間英作文は有効だと考えます。

まとめ

瞬間英作文トレーニングを続けることは、最終的に英語脳をつくることにつながります。文法知識と語彙力を活かす英語脳をつくることで、自信を持って英語が話せるようになれるでしょう。